網膜色素変性症
網膜色素変性症と鍼灸について
網膜色素変性症の鍼灸施術を行っています。現代鍼灸治療法と伝統的な鍼灸術を併用し、院長の翁孟進が長年の臨床経験基づいて独自の鍼灸治療法を行います。東洋医学の鍼灸理論に基づきながら、常に海外から先端の鍼灸治療法を積極的に取り入れております。鍼灸施術開始から2ヶ月程度で、視力や視野の改善の始まりが確認できます。眼がチカチカする、光が眩しい、といった諸症状は数回程度の治療で緩和されます。中国国内の鍼灸専門研究所では様々な実験が行われています。鍼は毛様体血管に対して大きな調整作用があることがわかり、おそらくそれによって網膜など神経の微小な循環障害を解消させ、諸症状を改善されたと考えられます。鍼灸で視力を改善し、視野欠損の進行を遅らせることは可能です。特に初中期の方や症状が軽い方にお勧めしたいと思います。
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過去の鍼灸治療のデータ
当院は様々な網膜色素変性症の方々への鍼灸治療を行ってまいりました。症状の改善や進行を遅らせることが期待できます。以下は過去の網膜色素変性症の臨床例のデータの一部です。平成25年1月から平成29年12月までの4年間で当鍼灸院へ治療に訪れた網膜色素変性症のうち、経過観察ができた22名の治療効果についてまとめてみました。(眼科定期的な検診のデータによるもの)
網膜色素変性症になる前の状態を100%とすると、
①治癒:完治して症状が完全なくなる・・・0名(0%)
②非常に有効:視力改善と視野が広げた。・・・3名(13%)
③平衡状態:視力と視野は現状維持。・・・14名(635%)
④効果なし:症状が改善されなく進行中・・・5名(22%)
これまでの結果から、鍼治療による完治するのは難しいものの、視力・視野の向上は期待できます。また、視野と視力の悪化を遅らせることも可能ではないかと思います。目の疲れや目が重い、また頭痛、眼の周囲のチカチカした感じるなど症状も改善されます。視力や視野のみでなく、網膜色素変性症によるストレスや自律神経失調症の症状にも積極的に鍼灸治療を取り組んでおります。
自分で簡単できるツボ押し法
手の親指と人差し指の間にある「合谷、後頭部にある「天柱」です。目の周りのツボ、「晴明」左右の目の目頭から少し鼻よりのくぼみのところです。「魚腰」眉の中央に少し下にありまうす。「四白」瞳の中心の真下指一本のところにあります。太陽はこめかみから目尻に、少しくぼんでいるところです。
実際の鍼灸治療のレポート
以下は過去の網膜色素変性症の鍼灸治療例の一部です。
K・Mさん (41歳・男性) 平成13年初診。は、18歳の時に網膜色素変性症と診断された。両親や親族に同じ病気の人は見当たらないそうです。専門眼科定期的に通いながら毎週一回のペースに鍼灸治療にきています。非常に治療に対して熱心な方で、根気よく12年も鍼灸治療を続けた結果、視力も視野も維持していますし、ITの仕事で毎日パソコンを使っても支障が出てないようです。
N・Eさん(28歳 女性) 小学校一年生の検診で網膜色素変性症を疑われ、視力が両目ともに0.8まで下がったのは中学生のときのことでした。以来、視力低下が少しずつ進行してしまい、18歳になったときに視力は両目ともに0.5となりました。視野狭窄も認め始められました。その年に当院で鍼灸治療を開始し、視力と視野狭窄はわずかに進行していますが、その後、専門学校に入学され、エステティシャンの仕事を持ち、元気に働いています。現在も月二回のペースで鍼灸治療に通院されています。
O・Nさん(50歳・女性) 23歳ころに診断され、平成23年来院。初診の時に、左目はほとんど見えず、右目も0.1以下となっています。視野もほとんど残っていません。症状は進行中で、週一回にご主人と一緒に通ってきています。眼科の定期健診で左目がなかなか改善されませんが、右目の視力と視野はそのままで進行していません。 網膜色素変性症の鍼灸治療もなるべく早いうちから治療を開始した方が良いです。一旦視力がある程度まで落ちると回復するのは非常に難しくなります。
M・Hさん(57歳・男性) 平成20年に初めて来院した方で、中学生から夜盲症、30歳から視力が落ち、視野が狭くなっています。37歳に大学病院で網膜色素変性症と言われました。症状の進行を少しでも遅らせるために、毎週土曜日に群馬県から鍼灸治療にきています。鍼をはじめてから進行は見られず、視力も視野も維持しています。仕事にも支障はないようです。
K・Mさん(47歳・女性) 平成13年に来院、小学一年生に網膜色素変性症と診断されました。左1.0、右0.8と、視力はあまり低下していません。しかし、視野はどんどん被膜してきています。視野の進行だけでもなんとか防ぎたいということで鍼灸治療にきました。月に二回ペースで治療しており、心配していた視野狭窄の進行を遅らせています。
K・Dさん(18歳・女性) 初診は平成13年、小学3年生ころ病院で網膜色素変性症と診断され、点眼薬のみ治療をしましたが、視野は正常で視力が少しずつ落ちており、左0.7、右0.5となっていました。音大のピアノ科に受験するため視力を維持したいということで鍼灸治療にきました。この方も自分の病気に非常に前向きに取り組む方で、根気よく月に4~5回程度で通院していました。その結果、症状は進行せず、むしろ眼科の定期健診で視力が少し上がったそうです。
網膜色素変性症の鍼灸治療に考察
網膜色素変性症の鍼灸治療に来られるのは10~70代の方までと幅広い年齢層の方がみえています。網膜色素変性症の治療法は確立しておらず薬物療法が主流で、網膜色素変性症と付き合っていくことになる、というのが現時点での実状ですが、完治することが難しくても、今現在の状態を少しでも維持し継続させ前向きに生活できるようにする手段があれば、積極的に活用した方がいいと思います。
中国での網膜色素変性症の鍼灸治療
中国では1970年代から鍼により網膜色素変性症の治療は病院に取り入れられています。1980年代中期から伝統的に使われていた経穴以外に、さらにいくつかの有効なツボが開発され、豪鍼(鍼の一つの種類)を使って、鍼の感覚を眼区まで到達させることが重要だとされました。頭皮鍼や電気鍼および耳鍼なども使われている。鍼治療法は異なるため、効果が一定しない。視力がまだ完全に落ちないうちに治療すると効果が上がりやすいです。
昭和62年8月25日(火曜日)、読売新聞の記事<失明寸前、中国で回復>によると、「沼津市牟田口裕之さんという方が網膜色素変性症の治療するため、中国で鍼や漢方薬の療法を五ヶ月間にわたって受け、奇跡的に進行を喰い止めたばかりか視力もほぼ回復した」と報告されています。それが、きっかけで多くの患者様が鍼灸治療を受けるようになりました。
中国医学の中で網膜色素変性症という病気の名前は「青盲」という病名に相当します。例えば古典医学書<諸病源候論・巻二十八>のなかに<青盲>には「目には何の異常もなく、瞳の黒白もはっきり分かれているが、見ることが出来ない。」と書いていてます。病因や病機は復雑で、東洋医学的な見方では、生まれつきの体質で精血の不足により目に栄養がいかなくなりました。またはストレスなど精神的なものによる、気血が滞り、脈絡が通らなくなって目に栄養がいかないと考えられます。鍼灸治療をはじめとする東洋医学ではそのような血流の改善に取り組む治療を行います。ちなみに、東洋医学では、局所だけではなく、全身の状態を改善することによって、個々の病気もよくなっていくと考えています。
網膜色素変性症とはなにか
網膜に異常な色素沈着が起こる一連の病気のことです。網膜には光の強さを感じとる杆体細胞と、色を感じとる錐体細胞があり、物を見分ける大切な働きをしています。その情報が視神経を通して脳に伝えられることで、私たちは物を見ることができるわけです。ところが、この網膜の上皮層に色素がにじみ出て沈着すると、その部分の杆体細胞は侵され、明暗を感じる機能が失われてしまいます。 その結果、視野が狭くなってくるのです。 視野狭窄は長い年月にわたってゆっくりと進んでいくのが特徴です。そのため、子供のころになってもハッキリ異常を感じるのは20代、30代になってからというケースもよく見られます。 以前は原因となる遺伝子がわかっている患者さん全体の極一部でしかなかったのですが、最近の研究で多い遺伝子の変化があきらかになって、解析の精度とスピードもアップしてきています。網膜色素変性症の機能をもとの状態にもどしたり確実に進行を止める確立された治療法はありません。
網膜色素変性症の主な症状
(一)夜盲症(暗いところや夜にものが見えにくい)
網膜にある視細胞のうちの杆体細胞といって、主に暗いところで働く細胞に異変が起こり、徐々に細胞が死んでいくために網膜が萎縮して、光を感じ取ることができなくなり、暗いところでものが見えにくくなります。室内の薄暗いところにあるものが識別しにくかったり、夜の車の運転がつらくなったりといった症状がみられます。逆に、明るい所でまぶしいという『羞明(しゅうめい)』の症状も、病気が進むと現れてきます。
(二)視野狭窄(視野の一部が欠けて見えない)
視野が狭くなってることです。歩いていて人とぶつかりやすい、小さな段差に気づかずつまずく、落としたものを探しにくいです。車の運転で左右の車に気づきにくいです。人や車などが横から近寄ってくるのが分からないなど、日常生活に支障が出るだけでなく、危険なことも増えてきます。視野狭窄が進むと、視野の周辺部(左右・上下)が次第に見えにくくなり、中心部付近だけしか見えない状態になります
(三)視力が低下している
進むと視力も低下して視力障害となりますが、症状の現れ方や進行には個人差があり、視力低下から始まる人もいます。、非常にゆっくりと進行するので、定期健診で悪化が認められないことはめずらしくありません。数年から数十年かけてゆっくりと視野が狭くなり、視力が低下し、失明となる場合もあります。実際には、社会的失明(矯正視力が0.1以下)が多く、難病情報センターによれば「医学的失明になる方はむしろ少ない」とされています。
網膜色素変性症の症状や進行程度
症状や進行程度は、人によってかなり違いがあります。網膜色素変性症の典型的な症状は、夜や暗いところでものが見えにくい「夜盲、鳥目」と、視野が狭くなる「視野狭窄(きょうさく)」です。これは網膜の視細胞のなかでも、暗い場所での識別や視野の広さに関係している、杆体(かんたい)細胞に障害が起こるためです。2つの症状のうちでは、どちらかといえば夜盲・鳥目が先に起こり、室内の薄暗いところにあるものが識別しにくかったり、夜の車の運転がつらくなったりといった症状がみられます。加齢やほかの目の病気でもよく似た症状がみられますが、網膜色素変性症は両眼性で、少しずつ進行していくので、まず受診して検査を受けることが大切です。最近の都会では明るい場所が多いため、夜盲・鳥目の症状になかなか気づかず、視野が狭くなってから初めて「おかしい」と感じる人も少なくありません。視野が狭くなると、歩いていて人とぶつかりやすい、小さな段差に気づかずつまずく、落としたものを探しにくい、車の運転で左右の車に気づきにくい、といった症状がみられるようになります。いずれも分かりやすい症状なので、この場合も早めに受診することが大切です。視野狭窄が進むと、視野の周辺部(左右・上下)が次第に見えにくくなり、中心部付近だけしか見えない状態になります。この段階になると、視力もかなり低下していることが少なくありません。
網膜色素変性症の対策法
網膜色素変性症の対症的な方法として、遮光眼鏡を使います。遮光眼鏡は明るいところから急に暗いところに入ったときに感じる暗順応障害に対して有効であるほか、物のコントラストをより鮮明にしたり、また明るいところで感じる眩しさを軽減させたりします。共通する病変の傾向として網膜の血流低下が見られることから、西洋医学では血液循環促進剤やビタミン剤などを用いていますが、残念ながら網膜色素変性症の治癒の決め手となるまでには至っていません。しかし、新しい治療への動きは着実に始まっています。最近日本で安全性と効果を確かめる試験が行なわれ、臨床応用へと進む可能性が高くなっています。また、網膜色素上皮細胞の萎縮に対して再生医療を応用する試みも始まっていて、iPS細胞を用いた治療の可能性がでてきました。人工網膜については、安全性と効果を確かめる試験が行なわれ、臨床応用へと進む可能性が高くなっています。