顔面神経麻痺の鍼灸施術
顔面神経麻痺の鍼灸治療について

鍼灸により麻痺した神経や顔面神経管を含めた周辺組織の血流を改善し、また自然治癒力を引き出して、麻痺の回復を促します。顔面神経麻痺は早期治療が大切です。麻痺の症状、や治療開始時期などによって、予後に大きく影響することがあります。一般的に発症して一週間前後から鍼灸施術するのがベストだと言われています。発症初期は病院と並行しての鍼灸施術が可能です。鍼灸のことならお気軽にご相談ください。
顔面神経麻痺の原因、症状、予後などについてコメンテーターとして紹介されました
顔面麻痺についてコメンテーターとしてテレビ出演(よみうりテレビ提供)



テレビ出演(NHK提供)


スタジオで鍼施術(日本テレビ提供)


院長が中国の鍼灸師代表として選ばれた(TBSテレビ提供)

当院の鍼灸の症例
過去の顔面神経麻痺鍼灸治療の統計以下は過去の顔面神経麻痺の臨床例のデータの一部です。平成22年1月から12月までの1年で当鍼灸院に訪れた顔面神経麻痺の方々のうち、経過観察ができた84名の治療の結果についてみてみます。顔面麻痺になる前の状態を100%とすると、
①機能的、外見的ともに問題なし(100~95%以上回復)・・・69名(82.5%)
②表情を作る際に若干左右に差が出る(90~80%以上回復)・・・11名(13%)
③ある程度改善が見られたがそれ以上は戻らない(70%~50%)・・・3名(3.5%)
④ほぼ完全麻痺状態(50%以下)・・・1名(1%以下)
顔面神経麻痺とはどんな事か

ベル麻痺
ベル麻痺の主な原因は単純性ヘルペスウイルスにより発症したと言われています。何らかの原因により神経細胞内でヘルペスウイルスが増殖し、その結果、神経線維の炎症が起こり側頭骨内で顔面神経が腫れることにより、突然に顔面の麻痺が生じます。原因としては、疲労や冷たい風、ストレス、妊娠などが知られていいますが、ベル麻痺では原因がはっきりしないことも多く、特発性麻痺とも呼ばれます。ベル麻痺は末梢性の顔面神経麻痺の中の最も多いケースですが、原因不明の麻痺は通称「ベル麻痺」です。ベル麻痺は、顔面麻痺全体の70%ほどを占めます。ベル麻痺全体の8割の程度は1年以内にほとんど後遺症を残さずに治りますが、残りの1割に異常共同運動を伴う後遺症が残ります。
ラムゼイ・ハント症候群
耳を中心におこったこの水痘帯状疱疹(すいとうたいじょうほうしん)のことです。このウイルスは、水ぼうそうが治った後もからだのいろいろな神経節の中に潜んでいます。まだ原因ははっきりとわかっていませんが、疲労、精神的ストレス、日光照射、発熱などの刺激や、糖尿病の悪化、などをきっかけに再活性化にともない顔面神経が傷害されて発症すると言われています。ハント症候群はベル麻痺とともに末梢性顔面神経麻痺の2大原因の一つで、顔面麻痺全体の10%ほどを占めます。主な症状は、耳の周辺の発赤と水ぶくれ、のどの痛み、耳鳴りなどで、ベル麻痺と区別がつきやすいものですが、ベル麻痺かハント症候群か区別のつかないこともあります。ハント症候群はベル麻痺とともに末梢性顔面神経麻痺の2大原因の一つで、顔面麻痺全体の10%ほどを占めます。ちなみに、ベル麻痺は全体の約70%程度です。
末梢神経麻痺の主な症状
- 麻痺側の前額郡の「シワ」がなくなり、又「シワ」を作ることが出来ない。
- 閉眼が不十分、閉眼を命じると眼球が上方に回転するベル現象を呈す。
- 口笛が上手く吹けない。うがいができない。
- 神経麻痺側の鼻唇溝は平坦となり、口角は垂れ下がる。
- 神経麻痺側の舌の前2/3の味覚障害がでることがある。
- 涙液分泌障害、唾液分泌障害など。
- 耳が痛い、高い音や自分の声が響くなど症状。
- 平衡感覚の異常を呈することもある。(ラムゼイ・ハント症候群の場合)
顔面神経麻痺の原因と症状
主な原因
多くの末梢性麻痺の原因はまだ不明です。考えられる可能性として局所浮腫(きょくしょふしゅ)、ウイルス感染、寒冷、末梢血管障害などがあります。いずれにしても、顔面神経麻痺は何らかの原因で顔面神経がはれると顔面神経が圧迫され麻痺が現れると考えられています。臨床で一番多く見られるのがベル麻痺です。また、顔面神経管の中の神経に帯状疱疹ウイルスを感染し、顔面神経麻痺となる場合があります。それをラムゼイ・ハント症候群と呼ばれています。この場合には耳介や外耳道に水泡を伴い、痛みがあることが一般的です。慢性中耳炎、主に真珠腫性中耳炎で顔面神経麻痺が起こることがあります。また、外傷、特に側頭骨の骨折の場合に顔面神経麻痺を伴うこともあります。側頭骨以外の部分で起こる顔面神経麻痺には脳血管障害(いわゆる脳卒中)、脳腫瘍や耳下腺腫瘍があります。
顔面神経の完全麻痺期及び回復期における注意点
Ⅰ低周波(電気鍼)を避ける
低周波(電気)は麻痺側の筋肉を収縮させることによって、回復期では顔面神経核の興奮性が亢進しているために共同運動が出現しやすくなり、顔面拘縮の誘因になることもあります。長い間の鍼灸臨床経験と低周波刺激は禁忌という専門家の意見に基づいて、当院は回復期の顔面麻痺に低周波を使っていません。
Ⅱ顔面神経麻痺のマッサージについて
マッサージは麻痺した顔面筋肉の走行に沿って気持ちのよい強さでけっこうです。または蒸しタオルを使うと、顔面のこわばりに対して効果があります。マッサージ前に使って顔面筋のストレッチングを促します。
Ⅲ粗大筋力訓練は避ける
顔面神経麻痺になって麻痺側の筋力(表情筋)が低下したからと言って、荒っぽく強すぎる筋力訓練をすると中枢レベルの共同運動(後遺症)を誘導しやすなくなります。時間の経過とともに麻痺した筋肉の緊張は亢進し、顔面痙攣や顔面拘縮の誘因になります。
Ⅳ長時間に冷たい風を避ける
冷たい風やアイスを長時間顔面や耳の後ろ(顔面神経の出口)のあたりに当てると顔面神経麻痺になるかたもいます。顔面麻痺の側に冷たい風やアイスは避けたほうがいいです。特に回復期は要注意です。
Ⅴ顔面神経麻痺を治そうという気持ち
顔面神経麻痺になった原因はまだはっきりしないことが多いですが、超多忙の生活やストレスなどによって睡眠時間が極端に少なくなったり、また免疫力や体力が低下したことで麻痺になることも結構あります。できれば規則正しい習慣を身に付けて、自己健康管理をしっかりしましょう。免疫力や体力を高めて、治そうという気持ちを強くもち、常に前向き姿勢で臨むことによって、自然治癒力が高まり、麻痺の回復につながります。
顔面神経麻痺の主な後遺症
顔面神経麻痺の予後は、障害の程度や範囲、病因、治療法、治療開始時期などによって様々です。臨床において最も頻度の高いBell(ベル麻痺)とRamsay hunt(ラムゼイ・ハント症候群)などの場合は、神経障害が軽度であれば、適度な治療によりほとんど後遺症を残さず回復しますが、神経障害が重度の場合はしばしば後遺症を残します。顔面神経麻痺の後遺症はさまざまありますが、主な後遺症は以下のようなものです。
①病的共同運動
病的共同運動は不随意運動と言われるもので、顔面神経麻痺の後遺症のなかで最も頻度の高い症状です。元々目のまばたきの筋肉に行く神経と、口の周囲の開け閉めに使う口輪筋は根っこは同じ顔面神経ですが、口の開閉に伴い目が動くという共同運動が起こる場合です。普通の場合は顔面麻痺の発症して3~4ヶ月ころから出現します。
②ワニの涙
食事に際して、多量の涙分泌されます。発症後数ヶ月経て出てくるものです。唾液腺へいく神経と涙腺にいく神経が誤って起きる現象です。「ワニの涙」とはワニは食べ物を食べると涙が出るのでこう言われます。
③顔面拘縮
患側の顔面が持続的に収縮した結果です。鼻唇溝は深く、眼裂は狭小化し、安静時も顔が非対称に見える状態を顔面拘縮といいます。原因は顔面神経の再生神経数が少ないと言われています。しばしば病的共同運動を合併しています。
④アブミ骨筋性耳鳴
表情筋を再生するはずの再生神経線維が誤ってアブミ骨筋を支配したために起こる現象です。目を閉じたリ、口を動かしたりとしたときにアブミ骨筋が収縮し、耳鳴や一過性難聴が生じます。
⑤顔面痙攣(けいれん)
麻痺側の顔全体に及ぶ痙攣が起こり場合と口と眼の周りに局所痙攣が起こる場合があります。症状はそれほど強くはありませんが、後遺症として残ることがあります。後遺症として顔面痙攣の原因はまだはっきりしていません。
自分でできること
マッサージについて
①上下の瞼の筋肉は人差し指と中指で小さい円を描くように伸張する。
②おでこは人指し指、中指、薬指で上下に走行して伸張する。
③口角と耳を結ぶ線上にある頬全体を上下、前後、人差し指、中指で小さい円を描くように伸張する。
④唇の周囲を円形に取り巻く部分を、人差し指、中指で円を描き、左右へも伸張する。
上眼瞼挙筋を使う
後遺症の病的共同運動として、食事のたびに眼が閉じてしまいがちになるので、発症の早期から上眼瞼挙筋(動眼神経に支配され、上眼瞼を挙げたり開眼したりする筋肉)を使って眼輪筋(目の周りの筋肉)伸張を行います。話すとき、食事のときに目を見開く練習をしましょう。
注意点とリハビリの方法
急性期のリハビリ
発症して1~2か月は急性期と言います。高度の神経障害の場合は発症4か月前後に後遺症が出てくることが多いので、経過を診ているうちにリハビリをして、少しでも早いうちに軽減できないものかと思います。急性期リハビリの目標は顔面神経の迷入再生による病的共同運動と顔面拘縮の予防と軽減です。
慢性期のリハビリ
4か月過ぎてもまだ完治していない場合は慢性期と言います。病的共同運動、顔面のこわばり、筋力低下、けいれんなど様々な症状がでてくることがあります。この時期は、表情筋は動き出している時期なので、強い随意運動を避けて、軽く局部を動かす随意運動がおすすめです。たとえば、口のまわりの筋肉を動かすときに、なるべくおでこや目の筋肉を動かさないとか、逆に、おでこを動かすときに目の筋肉を動かさないようにイメージ療法を取り入れてください。
回数、時間、期間について
1日: 朝・昼、夕の3回、1回あたり 10分くらい。温かいタオルで顔を温めてから行います。強力なマッサージは避けましょう。
顔面神経障害と予後・後遺症
1度の障害:
部分麻痺(不全麻痺)とも言います。神経が圧迫され、生理的に神経の伝導がブロックされて起こる麻痺です。顔面神経の外膜に圧迫されて凹んでいます。圧迫が解除されると伝導ブロックは解除されます。3~4週間前後の治療でほとんど完全回復します。
2度の障害:
長期にわたって神経が圧迫されて、解除されません。神経の静脈がうっ血になって、完全麻痺になっている場合が多いです。正しく治療してうまくいけば完全に回復しますが、そうでないと少し後遺症が残ります。治療は1か月から3か月間かかります。
3度の障害:
神経内圧の上昇がより長期間にわたり、神経の軸索が破損した状態です。
神経の損傷がつよいので、多少顔面神経麻痺後遺症が残ります。症状が強い場合は迷入再生から病的共同運動、筋力低下などの後遺症が現れることがあります。治療は3か月~6か月間かかります。
4度・5度の障害:
高度の障害。神経が断裂した時にみられます。4度はうまくいけば少し動き出せますが、後遺症が残ります。5度は自然治癒は望めません。神経移植など外科的処置が必要になります。
外傷性顔面神経麻痺について
外傷による顔面神経麻痺の原因としては、交通事故が最も多く、次いで、脳腫瘍の手術、転落事故やスポーツ外傷などとなります。顔面神経の損傷は側頭骨錐体部と乳様突起部の骨折によって生じるものが多く、受傷直後に発生する早発性のものと、受傷後3~7日を経過してから発生する遅発性のものがあります。外傷性顔神麻痺の予後はその麻痺の発生時期で異なり、受傷直後に発生したものは予後がよくなく、遅発性の場合は、自然治癒するものが多く、予後良好と言われています。 早発性のものは、受傷時の骨折により顔面神経が損傷を受けることによって生じ、遅発性のものは、顔面神経の浮腫や血腫が原因であるようです。側頭骨骨折が起こるほど強い衝撃が加わると、顔面神経管内の神経が捻挫により過度に伸びたり、出血や腫脹をきたして顔面神経麻痺が生じます。
中枢性顔面神経麻痺について
中枢性顔面神経麻痺は、核上性顔面神経麻痺ともいわれます。中枢性顔面神経麻痺とは、大脳皮質から皮質延髄路、皮質網様体路など、顔面神経核に至るまでに原因がある場合に起こる顔面神経麻痺の総称です。脳卒中の発作後、または後遺症として、しばしば身体に運動麻痺が起こるのは、大脳皮質に局在する運動中枢が障害を受けるためです。中枢性の顔面神経マヒの鑑別(見分け方)方法は、
・麻痺している側の額のしわをつくることができる。
・麻痺側の閉眼が出来る。
・麻痺の程度がひどくない。
・手や足の痺れ、麻痺などが同時に出現する。などがあげられる。
ベル麻痺とハンド症候群以外の鍼治療法
外傷性顔面神経麻痺に対して、まず、病院で対症療法を行い、麻痺をひき起すものを取り除きます。遅発性の外傷性麻痺は鍼灸治療の適応症となります。また病院で保存療法と言われた場合は鍼灸治療もお勧めで、鍼灸によりよい効果を上げられます。
中枢性顔面神経麻痺は脳梗塞、脳内出血など重篤な疾患が考えられますので、CTやMRIの検査を行い、速やかな専門医への受診と治療が必要となります。症状が落ち着いてきて、退院してからリハビリをしながら鍼灸治療をスタートすればよいです。顔面麻痺以外の後遺症も治療できます。症状が軽い場合は鍼灸の効果が期待できると思います
顔面麻痺の症例

③改善ありは、こわばりや表情に改善が見られたものの日常生活を送る上で不自由なところがでてしまう例(まぶたが閉じない時がある、逆に開ききらないときがある、口から水が漏れるなど)です。神経の障害部位がおそらく深かった方、顔面神経麻痺の再発で来院された方(初発時に完治せず後遺症が出ている)、発症してから時間が長期経過して神経再生の見込みが難しい方が多いです。5年、中には15年経ってからの初診という方もいらっしゃいます。治療によりいくらか動きがよくなったり顔の筋肉が柔らかくなったりするものの、回復できる程度にもやはり限りがあります。また、治療開始時に共同運動などが出てしまっていた方は、他の症状が改善してもその後遺症だけは残ってしまいます。顔面神経麻痺後遺症のうちの顔面拘縮は、治療後はしばらく改善するものの時間が経つと戻ってしまうということもあります。ただ、それでも本人があきらめていた顔の動きができるようになった例もあります。
④効果なしの方は交通事故や頭部手術など、顔面神経の障害部位が深かったり障害の程度が大きい場合で、そうなると若干の変化はみられるものの、大きな効果は期待できない場合が多いです。
症例報告
(1)N・Hさん 34歳 男性 ベル麻痺 総合病院で顔面神経麻痺と診断され、ステロイド剤を出された。主訴は「うがいができない」「目が完全に閉じない」。発症10日後に来院。顔面運動評価などテストして顔面神経は不完全麻痺とされる。3週間後は海外出張することになるため、ご本人の希望もあって、一週間に四回の集中的な鍼灸治療を行った。二週間後に麻痺が完全に取れていた。3週後は少し違和感が残っているものの、後遺症を残さず完治した。この方は完全麻痺ではないということも早期回復の要因の一つと思われる。早期の鍼灸と短期集中的な治療もよい効果をもたらすと考えられる。
(2)M・Nさん 35歳 女性 ハント症候群 発症してすぐ入院しステロイド点滴、抗ウィルス剤服用、神経ブロックを受けるがあまり芳しくなく医師に手術を勧められる。顔の左半分マヒ、味覚も感じないところがあり耳が痛い。当初は入院しながら週2回のペースで通院し、退院してからも週2~3回通う。1回ごとの治療では明らかな変化は認められないが、3ヶ月、4ヶ月と経過を見ると徐々に回復が認められるようになり、7~8ヶ月目になると外見上ほとんど顔面マヒだと判らないくらいまで改善する。その後も少しこわばりを感じたり調子があまり良くないときに不定期に鍼灸を受けに来る。勧められた手術を受けずに鍼灸でよくなったことで本人も胸をなでおろしている模様で、予想以上の好結果が得られた。
(3)O・Mさん 49歳 男性 ベル麻痺 病院で1週間ステロイド点滴、その後ビタミン剤服用を続ける。
発症後一週間後に来院。初診での主訴は「口の周りから水が漏れる」 顔を正中腺(中心を通る線)で分けて見ると唇は右側へ引っ張られ、鼻唇溝も非対称となる。額をつり上げるマッサージをするとまぶたもつられて開き、白目が露出する。週に2~3回の治療を受け、3ヶ月ほど経つと顔の印象が整ってきて水も漏れなくなり、白目が露出することがなくなった。また自覚症状としてのこわばりは日を追うごとに改善しているようだが、マッサージをする側からもこわばりが取れていくのがわかった。発症して初診までの2ヶ月弱は全く変化が見られなかったが、治癒をあせらず鍼灸を受け続けたのがよかったと思われる。
(4)E・Tさん 31歳 男性 ベル麻痺 発症の2日後で顔の左半分が完全麻痺、こわばっている感じる。頭痛を伴う。病院ではステロイド点滴と漢方を処方される。二週間後に来院。1回目で頭痛が取れ、こわばりが少しやわらかくなる。1週間に3回のペースで通院し1ヶ月経つと、見た目には分からないくらいまで回復。よく観察すると口を広げるときに左側が少し広がりきらない感じはあるが機能的には問題ない様子。その後は週に1回で何回か通院していて、後遺症を残さずに完治できた。傷害された部位が深くなかったことと発症後すぐに来院したことで、効果的な治療ができ比較的早い回復がみられた。
(5)M・Y さん 20歳 男性 ハント症候群 主訴は「表情が出せない」。発症から5ヶ月ほど経過してからの来院。1回目の治療後、自覚的に顔のこわばりが少し取れた模様。仕事の都合でコンスタントに通院できないが週に1~2回のペースで治療を受け、しばらくすると顔の筋肉に柔軟性が出てくる。異動で東京を離れるまで3ヶ月ほど通い、完全ではないがそれまで自分で思うように作れなかった表情が作れるようになる。治療開始時期が遅く、初診の印象で回復は難しいように思われたが、本人の治りたい気持ちも手伝ってか鍼灸の効果が良く表れた。
顔面神経麻痺になったらどうすればいいか?

麻痺にかかったら病院では何科に行けばよいか、またどんな治療法をすればよいのか迷っている方々が多いと思います。一般的にまず耳鼻科へ行きます。 必要なら脳神経内科などが紹介されます。脳血管障害(脳梗塞、脳内出血)による中枢性の顔面神経麻痺が疑われる場合は、CTやMRIの検査を行います。また帯状疱疹のウイルスによるハンド症候群の場合は血液を検査することもあります。病院で行う主な治療法は最初副腎皮質ステロイドや抗ウイルス剤の点滴、また経口副腎皮質ホルモン剤を服用し、10日後に血流改善剤、ビタミン剤や神経賦活剤などが薬が処方されます。病院によっては顔面神経減荷術の手術や星状神経節ブロックなどを行うところもあります。手術の後遺症を伴うなどのリスクが高いですし、因果関係はまだはっきりしていないということで、現状ではよい治療法とは言いきれません。