外科的な治療法

Ⅰ)顔面神経減荷術

急性期特発性顔面神経麻痺はウイルスの感染、真珠腫性中耳炎により神経が圧迫されて、まず薬物療法が行われますが、薬物療法の効果が見られない時などに手術治療を検討します。主に神経周囲の骨を削ることで圧迫から開放して血流の改善を図り、神経の変性をくいとめて顔面神経麻痺を治療します。炎症性腫脹を呈する顔面神経を骨性顔面神経管のレベルで除圧、開放する手術が行われます。これまでの報告はランダム化されていません。副腎皮質ホルモンが併用されているため、エビデンスの高い報告はないようです。また,難聴などの合併症の報告もあります。現時点で日本顔面神経学会より推奨されていません。

Ⅱ)麻痺後遺症に対する外科手術

半年以上経過しても顔面神経機能の回復が見込まれないとき、その機能を回復させるため、幾つかの手技が実施されています。舌下神経から顔面神経吻合術があります。また、健側顔面神経から顔面皮下を通じて患部側へ,末梢神経移植による吻合を行います。一部に筋移植を行う手技も実施されています。

Ⅲ)病的共同運動のボトックス注射

病的共同運動や顔面拘縮など後遺症に対して新しい治療の選択肢として最近登場したのは ボトックス注射による治療法です。発症から一年以上経ってから行います。ボトックス(ボツリヌス毒素)を顔面の筋肉に注射することで、表情筋を一旦麻痺させて、その後リハビリを導入することがあります。ボトックスの効果は3~4ヶ月間持続します。病的共同運動や顔面拘縮は再発するため、多くの場合は再注射が必要です。

翁鍼灸治療院